「20の短編小説」とは?
とある書店の目立つコーナーに、ある文庫本がありました。
表紙には作家の名前がずらっと書かれており、私の好きな作家である森見登美彦の名前もあります。なんの本だろうと手にとってよくよく見てみました。タイトルは「20の短編小説」とあり、帯にはこう記されています。
「人気作家20人が「20」をテーマに短編を競作。満足度100%、最強のアンソロジー!」

というわけで「20の短編小説」は有り体に言えば、企画系の作品集です。
収録されているのは、以下の通り。
- 朝井リョウ「清水課長の二重線」
- 阿部和重「Across The Border」
- 伊坂幸太郎「if」
- 井上荒野「二十人目ルール」
- 江國香織「蒸篭を買った日」
- 円城塔「十二面体関係」
- 恩田陸「悪い春」
- 川上弘美「20」
- 木皿泉「20光年先の神様」
- 桐野夏生「マダガスカル・バナナフランベを20本」
- 白石一文「いま二十歳の貴女たちへ」
- 津村記久子「ペチュニアフォールを知る二十の名所」
- 羽田圭介「ウエノモノ」
- 原田マハ「ブリオッシュのある静物」
- 樋口毅宏「人生リングアウト」
- 藤井太洋「ヴァンテアン」
- 宮内悠介「法則」
- 森見登美彦「廿世紀ホテル」
- 山内マリコ「もう二十代ではないことについて」
- 山本文緒「20×20」
誰か一人はお気に入りが見つかる!?

20人がそれぞれ「20」というテーマで書いているこのアンソロジー。人によって20の捉え方は様々で、年齢で捉える人もいれば個数や人数で捉える人もいます。
また作風もまったく異なっており、円城塔の「十二面体関係」などはかなり尖って読者を選ぶ一方、朝井リョウの「清水課長の二重線」などは多くの人が共感できるイイ話であったり、本当にバラバラです。
20作品全部気に入った!という方はそういった理由から希少。だからこそ誰でも一つはいいなと思える作品に出会えるはず。
私個人だと森見登美彦「廿世紀ホテル」はもちろん良かったのですが、それに加え、津村記久子「ペチュニアフォールを知る二十の名所」や宮内悠介「法則」もかなり気に入りました。
こういうアンソロジーじゃないと、この作者たちとは出会わなかったかもしれません。
普段読書しない方にも、読書をする方にもおすすめ!
読書なんてあまりしないという方に、この本はおすすめです。
というのもどれも非常に短い作品なので、長編小説を読むような読書体力がない方もちょっとしたスキマ時間にささっと読めます。また全部を読む必要も、順番に読む必要もありません。ぜひ読書の入り口として読んでみてください。
いつも何かを読んでいる読書家の方に、この本はおすすめです。
というのも人気作家の方が特殊なテーマで割と実験的な作品を書いているので、「この作家がこういう話を書いてきたか!」と他の作品を知っているからこその楽しみ方ができます。また改めて作家の筆力を感じられるでしょう。ぜひ積ん読の合間に読んでみてください。